読書メモ 山下範久編著『教養としての世界史の学び方』(東洋経済新報社、2019)

山下範久編著『教養としての世界史の学び方』(東洋経済新報社、2019)

ツイッターで編著者の山下先生や執筆者の石川先生が呟いて宣伝しておられた。

 

で、衝動買いして、とりあえずまず第一部。

何か書いておかないと何も残らないので、かなり端折って箇条書きで。

 

◎歴史とは何か
・神話と歴史の違い:経験的事実に基づくか否か
・しかし、「特定の社会の形を正統化する」という機能面に着目すると、そこに違いはない
 
◎現在の歴史学と近代
・現在の歴史学は、科学として真理を追究する知的生産の営みとして認識されている
・科学としての歴史学の特徴は、歴史が一回性と自己対象化の力(自らを観察し、それに基づいて自らを変化させる=再帰性)を持つために、個性記述的アプローチをとっている点にある
・ランケの歴史主義:過去の事象をその過去の文脈において理解せよ
 →現在の視点からの解釈を排除する
 →各時代には他の時代とは独立した全体性を有している(各時代に固有の視点がある)
・古代中世近代の三区分
・近代は、自己言及性を持ち、現代と地続きであるために、概念が伸縮する(これまでの時代と何が違うか、どの要素が近代を特徴づけるか、が論者の注目点に従って変化する)
 →主に2つの立場:15世紀後半からと18世紀末から
・近代そのものも区分できる
 →長い19世紀と短い20世紀 ホブズボーム
・近代に依拠することによって生じるバイアス3種:
 →近代の目的視(スタートとゴール、発展主義)
 →ネイション(社会変革の主体・単位はネイション、近代に向かって変化していない社会に歴史はない)
 →ヨーロッパ中心主義(三区分は非ヨーロッパに当てはめると、うまく妥当しなかったり、重要な要素を見落としがち)
 
◎近代を如何に乗り越えるか
グローバル化という視点
 →世界の一体化:15~18世紀の間に、複数に分かれていた世界が一つになり始めたと考える
 →非ヨーロッパを、どのような時代区分で考えるか?
  ⇒多様な諸社会を、外部との関係性の変化に注目して捉えなおす
 →非ヨーロッパがヨーロッパに組み込まれていく過程と捉えるのではなく、もともとあったつながり・関係性が変化していく過程と捉える
  ⇒近代を特徴づける関係性の様式とは何か?
ウォーラスティンの世界システム論:グローバルな格差は、近代化の速い遅いではなく、中心と周縁の間における横の関係性の両極化として捉えられる
 →世界システムの中か外か、という枠組みなので、結局のところスタートとゴールがある
 →それぞれ異なった「世界」があって、その間の関係性が変わると捉えると、バイアスによる見逃しが緩和する
・ヨーロッパと非ヨーロッパのそれぞれ別の世界は、19世紀に異なるコースを辿ることになったのはなぜか?という問いが出てくる⇒ヨーロッパを問い直すことにもつながる
・そうすると、今(近代)はゴールではなく過渡期
 →近代にも色々ある:歴史の終わりではなく文明の衝突、「グローカル化」
 →近代の時代区分は不適当:自然対社会の前提の元、近代歴史学は、自ら修正できる社会のみ着目してきたが、実際は人間がデザイン不可能な形で自然が社会に影響を及ぼしているから
→近代は人類の適応の一局面でしかない 
 
 
これまで我々が近代として認識してきたものの中に存在する特徴的な関係性の様式は何か、というのがこれからの考察や分析において気にしてほしい点ということでしょうか。
グローバルヒストリーとか、ちょっと前にはやった『銃、病原菌、鉄』、それから『サピエンス全史』は、自然の影響を問い直す流れにあるんだな。
 
序文で、この本の対象読者として新大学一年生が挙がってたけど、我が身を振り返ると、これを一人で読み切る自信はないな・・・という程度には、表紙詐欺