レビュー論文の読み方・扱い方

※とりとめもなく書いてしまったので、先に結論を。レビュー論文を読みながらも、具体的なリサーチクエスチョンをひねり出せず、理論をぐるぐる回って抜け出せなくなったら、そのレビュー論文の中から、えいやっと扱う理論・概念を決めてしまうのも一つの手です。その上で、その理論や概念に関する研究史を辿って、研究の穴を見つける、というのが、レビュー論文の使い方の一つかもしれません。

 

〇イントロ

今日、みんなで論文を読む会をやってきました。前回の記事でも少し言及したように、今回の論文は社会運動論とテロに関するレビュー論文でした。

しばしば、文献調査に関して、書籍やブログ記事、Twitterなどで言われていることとして、レビュー論文を見つけて、そこからこれまでに解かれていない問いを探す、ということがあります。

でも、実際にレビュー論文をどう使えばいいのか、具体的に教えてくれるものは少ない気がするのと、自分の経験として、そこから自分の論文の問いに落とし込むまでにえらく時間がかかったということがあり、実際どうすればよかったのか?というのが今回のお話です。

 

〇レビュー論文:大きな流れと支流

院生の研究初期の心強い味方、レビュー論文。トピックに関するこれまでの研究を整理し、今後の研究の道筋を示す、なくてはならない存在です。私も大変お世話になっております。

とはいいつつ、実際にそのレビュー論文でこれからの研究課題として挙げられていることと、自分の関心が合致するとは限らないですし、むしろそこで挙げられている一部の議論に関心があって読んでいるということのほうが多い気がします。

さらに、学部や修士の段階であれば、例えばEUエージェンシーに興味があって、EUエージェンシーというタイトルのレビュー論文を読んでいることだってあるわけです。(ちなみにこのテーマに興味があるなら、例えばこれをどうぞ)

www.duo.uio.no

しかし、そのままだと、卒論や修論のためのリサーチクエスチョンは出てきません。なぜなら、多くの場合、レビュー論文はある種のカタログであって、こういう話もある、ああいう話もあるという形式をとっているために、そこから問いを作るにはもうワンステップ必要だからです。

そのステップとは、レビュー論文で提示されているいくつかの議論のうちの一つあるいは複数に関する研究史の掘り下げです。

レビュー論文は、多くの場合、その時点での研究の到達点を示すものであるため、カタログ化された各項目間の関係はそのトピック全体の流れに沿って関連付けられます。

例えば、ある時期に合理性を強調する議論が隆盛し、その後それを批判する形で文化に着目する研究が登場するといった形です。

そして、各理論や視点について、レビュー論文では紹介されなかった様々な研究が存在しています。そこでの議論は、その理論が登場する以前の研究や、登場した後の批判を考慮しながら蓄積されていきます。

つまり、テロと社会運動論という大きなトピックにおける研究の流れの中に、資源動員論の支流、フレーム理論の支流、あるいは社会運動の暴力化に対する国家の影響だとか、各社会運動間の相互作用に関する研究といった支流が存在しているわけです。

この大きな流れは、リサーチクエスチョンとしてはしばしば抽象的で大きすぎます。大きな流れの話をするためには、それぞれの支流の話を踏まえる必要があり、それらを統合して何らかの答えを出すというのは、能力や経験、時間を要求されるからです。

卒論や修論といった、期限が区切られており、かつその期限が短いような場合には、現実的に研究をデザインしようとすれば、そのうちの一つか二つ程度について検討することになるでしょう。

あとは、レビュー論文で提示されたそれぞれの支流の代表的な論文から、芋づる式に文献を調査していけばよいのです。それを自分なりに整理すれば、卒論や修論の先行研究としての厚みが出てくるでしょう。

 

〇迷ったらどうするか

しかし、私の場合はここからどの支流を選ぶのかで大変難儀しました。

だってどれも説明として魅力的だし、それぞれが提示する要素は全て重要に見えるもの。

実際、どれも自分の関心が置かれている大きなトピックの一面を照らしているわけで、大きく間違っているとかも、一見してないわけです。しかも、それぞれの視点から説明されているものを全体的にみると、もはや自分が何かを付け加える余地すらないかのようにも見えてきます。ここから支流を掘り下げてみると、問いが見つかったりするわけですが・・・

学生の場合は、ここで指導教員と相談したりして、良い支流、悪い支流に関するアドバイスがもらえたりしますが、自分のテーマと先生の専門がそこまでマッチしていないと、もはや自分でやるか、ほかの先生に聞きに行くとかになってきます。

先生の側としても、なかなかアドバイスが難しかったりするんだろうなと思うところもあります。

いずれにせよ、ここで扱う支流を選ばなければ、具体的なリサーチクエスチョンを出すのが難しくなります。

私としては、一つの手として、勘や好みで選んでもいいのかなと思います。そりゃ、爆死しないか念入りに検討する時間があればいいですが、それだと卒業・修了できませんから。卒論であれば、学問的な知見を付け加えることもほとんど求められていないと思うので、十分だと思います。修論も、大きな流れを意識しつつ、ほかの支流との関係を踏まえて今後の課題を提示できれば合格なのかもしれません。

博士になると、議論が尽くされているか、近年の研究動向はどうなっているかなどを踏まえて各支流を選び、最終的に統合するというところまでいくのでしょう。できてませんが。

 

 〇おわりに

だらだらと書いてしまいましたが、大きな流れと支流というのが、自分の研究と先行研究の関係性を捉える現時点での理解になります。そうじゃないんじゃないの?などあれば、コメントいただければ大変ありがたいです。

しかし、こういうノウハウみたいなのって、体系的にまとまってるわけでもないし、代々受け継がれる技みたいな感じがするので、やはり勉強会は大事ですね。