難民アシスタント養成講座を受講して

www.refugee.or.jp

この週末で受講してきました。タイトルで検索しても、内容に言及している記事などがあまりなかったので、参加を検討している人の参考になるといいなと思います。

何しろ参加費が社会人1万5千円、学生1万円で、遠方の人も結構多いので、交通費も考えれば躊躇してもおかしくない。

先に言ってしまえば、学生の人でも1万円払う価値はあると思っています。特に、学校や大学などでちょっとした知識は得た、あるいはボランティアやNGO団体の活動に参加したことがあるけれど、もう少し掘り下げた知識や生の情報をあまり持っていないという人には、本格的な調査や勉強に入る前に、問題分野のどこに目を向けるか見定めるいい機会になるように思います。

また、講師、参加者、資料のどの要素もレベルが高いように感じました。

まだ自分の中でまとまっていなかったり、書くべきでない内容もあるため、ちょっとしたコメント程度になりますが、どうぞご了承ください。

 

1、コンテンツについて

全体の大まかな内容としては次のようになっていると思いました。

  1. 制度の形式的理解
  2. 制度運用の実態
  3. アカデミックな視点
  4. 一連の過程で、難民が何を体験するか
  5. 市民社会が何をするか、できるか
  6. 議論

こうしたイベントに参加しなければ中々知り得ないのは、②,④,⑤かと思いますが、実際に難民認定を受けた方の体験談、申請を支援する弁護士や、ソーシャルワーカーの方のお話が充実していました。

特に弁護士の方の講義は、そのとても熱い人柄が感じられ、また実例を踏まえた講義は真に迫るものでした。この講義についてだけ、少し言及したいと思います。

講義内容としては、次のいくつかがポイントになるかとおもいます。

 〇現行制度は、運用面でどのように問題となっているか

  • 実際には使われていない名ばかり制度がある
  • 難民申請手続が、保護ではなく国境管理の手段として運用されている
  • 行政の能力が不足している(調査官、参与員の規模など)
  • 難民申請者の人権が保護されない(入管の収容施設での実態、申請手続きのアカウンタビリティーの欠如など)

こうしたことが、なかなかきつい実例を踏まえて説明されます。

最終的には、制度を国境管理と難民保護にわけ、後者のための専門制度を立ち上げることが必要だということが、一応の結論になるのかなと思います。

簡単な感想として、この分野の制度は圧倒的に洗練度が足りていない一方で、10年20年単位で管理重視という制度的方針が変わっておらず、保護の観点からは改悪ともいえる制度変更が行われていることを踏まえると、政治や国民のレベルで保護への転換が起きにくい構造がありそうだなと思います。

 

2、講師の方について

印象に残ったのは、多くの講師の方が、フェアな立場をとっておられる点にあります。難民申請制度が、必ずしも保護を必要としない人が滞在や就労の機会を得るために利用されていることを認めた上で、更に意見を述べられることが多かったです。こうしたことができるのは、制度や支援の中で生じる問題が簡単には解決できないことを受け入れてた上で、それらに真摯に向き合っておられる方々ばかりだからだと思います。

制度の外にいる人は好き勝手言えますし、中の人として仕方がないとはいえ、行政の方のお話はポジショントークっぽいところもあったので、図らずもそのコントラストが際立ってしまったなぁと思います。

 

 3、参加者について

もちろん、回によって異なるとは思いますが、質問や発言がコンパクトにまとまっていたり、鋭い視点を提示する方が多かったと思います。長々と質問する人がほとんどいませんでした。ディスカッションでも、どのグループも上手に回している印象で、こうしたことに慣れている人が多いな~と思いました。社会人の方が多いからでしょうか。参加費でスクリーニングもされているでしょうね。逆に自分の能力・訓練の不足を自覚して若干へこみました。

 

 4、資料について

制度的にも未熟なのもあって、日本の難民認定制度や日本の難民保護そのものを体系的に説明する本が多くない中で、参照されているデータや資料は、調査の足掛かりになると思いました。各講義ごとに挙げられている参考文献も新しいものが多く、これから増えていくんだろうなという感じがします。調べようとする場合は、多くは論文にあたらないとならないでしょう。そうでなければ、法的な議論が多くとっつきにくいものが多そうです。そうした中で、もらった冊子は文献リストとしてかなり有用な印象です。

 

〇まとめ

本当に簡単なコメントでしたが、以上のようなことがさしあたりもっている講座の感想です。本当はダメなところも挙げるべきなんでしょうが、あまりこの手のセミナーに参加したことがないので何とも言えないということはあります。それでも行って損したなと思うことはありませんでした。長くて、ちょっと疲れたなくらいでしょうか。そもそも持っている知識量などで感想も変わると思いますが、冒頭で述べたように、少し知っているけど・・・レベルの人にはドンピシャの講座になりそうです。

そもそも国際協力系のイベントはその多くが東京で開かれ、更に難民問題となると、学ぶ機会は地方ではいわずもがな、という感じです。その中で一定の質を保ったイベントを見つけるのは大変でしょう。関心がある方はとりあえず参加してみる、で飛び込んでも多くを得ることができる講座だと思います。